交通事故の損害賠償~休業損害

1 休業損害とは

 休業損害とは,事故による入通院,もしくは医者からの自宅療養指示等によって仕事ができなくなった場合に,得られるはずだった賃金や収入を損害と捉えるものです。
 要するに,事故のせいで仕事を休み,それによって給料を減らされた場合,その減給分が休業損害にあたるということです。

2 休業損害の算定方法

⑴ 計算式

 休業損害は,ざっくりいうと,休んだ日数×1日あたりの収入で計算されます。
 半休をとったような場合には0.5日として計算したりします。

⑵ 1日あたりの収入

 少々争いがでてくるのが,1日あたりの収入の計算です。
 1日あたりの収入は,多くの場合,過去3ヶ月分の平均収入を日数αで除して計算されます。自営業者の場合は昨年度の確定申告書から算出されることが多いです。
 このαですが,保険会社は,「90」として計算してきます。
 しかし,収入は,働いた日数=稼働日数に応じて支給されているはずです。月30万円の収入があるならば,それは,「月30日働いたことによる報酬」ではなく,「休日を除いた日数分働いたことによる報酬」であるはずです。
 そこで,除数αは,「90」ではなく,「過去3ヶ月分の稼働日数」とするべきなのです。

 ⑶ 給与所得者の場合

 給与所得者であれば,休業損害証明書を会社に作成してもらい,概ね上記計算式の通りの算出で対応できます。

3 家事従事者の休業損害

 家事従事者,つまり専業主婦やそれに類する方は,実際にお金を稼いでいるわけではないものの,その家事等を行うことによって,家計全体の収入の助けとなっています。また,家事を他人に依頼すると費用がかかります。そのため,家事は,経済的価値に換算しうるものです。
 ただし,家事の具体的内容によってその価値が変わると考えると,必ずしも平等な結果になりません。
 そこで,家事従事者の年収を算出するにあたっては,賃金センサスと呼ばれる指標を用います。これによれば,概ね,370万円程度(年度によって変動します)が家事従事者の年収として算定されます。
 入院ならばともかく,通院で丸一日家事ができなくなることは考えにくいので,0.3や0.5倍で計算されることがありますが,いずれにせよ,家事従事者であっても,休業損害が請求できます。

4 会社役員等の休業損害

 休業損害が認められにくいのが,会社役員です。なぜなら,役員報酬は,通常,労働の対価としての賃金ではなく,その役職に応じた一定額の報酬が支払われる性質のものだからです(委任契約)。
 要するに,「休んだところで収入が変わらないのだから休業損害はない」ということです。
 ただ,役員報酬とは別に,労働の対価部分がある場合で,そちらが減給の対象になっている場合には,給与所得者に準じた請求が可能です。

5 休業損害に関するその他

 その他の問題として,一人会社の役員の休業損害の問題や,労働者の休業にもかかわらず会社が変わらず給与を支払った場合の会社の反射損害,無職者や学生の休業損害等,ややこしい問題がたくさんあります。
 休業損害で争いになりそうでしたら,当事務所にご依頼ください。

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