札幌地裁(武部知子裁判官)による同性婚認容規定不存在の違憲判決!!

またも憲法論上画期的な判決が出ましたねぇ!!!

ざっくりいうと、同性愛者である原告が、同性婚を認めないのは憲法に違反している(違憲)こと、違憲の状態なのにこの状態を解消させるよう法律を作らない国に責任があること、を主張し、国家賠償法上の損害賠償請求を行ったのが、今回の札幌地裁の訴訟です。同種の訴訟が他5つの地裁で行われているようですね。

①判決の結論
判決としては、原告の請求は棄却されました。

え??棄却???って思うじゃないですか。
原告が請求しているのは、理由はいろいろあれど、法的な結論としては「慰謝料その他損害賠償」なんですよ。

日本では、「法律が憲法に違反してること」そのものを問題として訴えることができません(付随的違憲審査制度といいます)。
そのため、「違憲であること」は、そのほか何らかの請求を基礎づける理由としてのみ主張できる、ということです。難しいですよね。

本判決は、結論として損害賠償請求までは認められないけれど、その理由の中で、「本件規定(同性婚を認める規定を置いていない現行民法等諸規定)が,同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであって,その限度で憲法14条1項に違反する。」と判示しています。
この部分が画期的なのだ、ということですね。

②原告の主張と裁判所の判断
さて、原告は、本件規定が同性婚を認めていないことの違憲性について、憲法13条、14条、24条を挙げて主張しています。
このうち、本件規定は、憲法13条と24条に違反してはいないけれども、14条には違反している、と判示しています。

③憲法13条と24条違反について
憲法24条は、両性の本質的平等と婚姻の自由を定めた規定です。
判決は、24条が予定しているのはあくまで「両性」つまり男性と女性との異性婚であって、これは同性婚をする自由を保障しているものではない、としています。ただし、この判示から、「憲法24条は同性婚を禁止している」と読むことには、重大な国語能力の欠如があるでしょう(保障されていないからといって必ず禁止であるはずがないですからね)。
いずれにせよ、憲法24条のみでは、同性婚が保障されているという結論は導き出せません。

次に、憲法13条は、いわゆる幸福追求権を定めた規定だと言われています。
憲法論上、表現の自由や経済的自由など、歴史的かつ重要な諸権利については明文で規定されていますが、それ以外の権利や、守られるべき利益が無視されてよい理由にはなりません。
そこで、憲法は、13条を用意し、当時は想定できなかった様々な権利を基礎づけることができるようにしているのです(と、解釈されています)。
いわゆる「新しい人権」(日照権、プライバシー権など)は、ここから派生した権利だと言われています。
原告の個別の主張は不明ですが、裁判所の判示内容からすれば、13条の規定から、国民は、同性婚を認めるよう国会に制度構築することを請求する権利があると主張したのではないでしょうか。
裁判所は、この部分について、13条の解釈のみから、国民は、国会に対し、同性婚を許容するような制度構築をするよう求める権利が保障されていると解釈することはできない、と判示しています。
より端的に、「同性婚をする権利」について主張はしなかったのだろうかとも思うのですが、裁判所の判示内容からは推し量れません。

④憲法14条違反について
憲法14条は、平等権を規定しています。
14条は性別や人種、門地など、当人がどうすることもできない事情による差別を禁止しています。また、列挙されているもののみならず、それ以外の理由による差別も原則として禁止していますが、合理的な取り扱いの区別は必要です(国家公務員試験で成績で任用可否を決めるとか、国立大学への進学者は成績順であるとか、障がい者には手厚い補償をすべきであるなど)。
また、制度上どうしても区別が必要な場合もあります(女性の産休、再婚禁止期間のほか、飲酒・喫煙可能年齢など)。
しかし、歴史的にも、当人がどうしようもない事情で差別されてきた経緯があります(人種差別、女性蔑視、士農工商えたひにん等門地によるもの等)から、こうした事情による差別は、原則として禁止されている、と解釈されています。

判決は、性的指向は当人の意思でどうすることもできないという点で、性別や人種と同様のものであることを前提に、それに基づく区別ないし差別が合理的と言えるかどうかについては、慎重に検討すべきとしています。
そのうえで、現代では同性愛は精神疾患ではないという医学的知見が確立していることや、現行民法は子の有無にかかわらず家庭を保護する趣旨を有すること、パートナーシップ制度の導入や諸外国での認容も加味し、婚姻によって生じる法的効果を享受することは重要な法的利益であること、こうした法的利益の享受は、同性愛者であるからといって受けられない合理的理由があるものではない、と示しました。

そのうえで、現行規定では、同性愛者は婚姻による法的利益を一切享受できておらず、これを可能とする法的手段が全く提供されていない現状は、違憲の状態にあると締めくくっております。

要するに、国会は同性婚についてきちんと考えた形跡もないし、婚姻に近いことが全く認められていないのは流石にいかんよ!!ってことです。かなり乱暴な言い方ですが・・。

今後、別の地裁でも判決が出されるでしょうが、判断は分かれうるものではないかと思っています。
判決の内容と、国会の動きには注目が必要ですね。

ブイブイ!

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