交通事故の損害賠償~入通院慰謝料
1 入通院慰謝料とは
入通院慰謝料とは,その名の通り,入通院に関する慰謝料です。慰謝料とは,精神的苦痛を慰謝するためのお金のことをいいます。
つまり,入院すること,通院することそのものによって,怪我という肉体的な損害とは別に,精神にも損害が生じているであろうということで,入通院慰謝料が認められるのです。
2 算定基準
とは言っても,交通事故によってどのくらいの精神的損害を負うか,またはそもそも負わないかは,人によって千差万別です。また,人の心はその人にしかわからないため,精神的損害を慰謝するに足りる賠償金は,被害者によってまちまちになりかねません。しかし,これでは賠償金を支払う人(加害者)にとって,あまりにも酷ですし,その精神的損害の証明も極めて難しいところです。
そこで,実務上,入通院慰謝料を,通院回数ないし通院期間に応じて,機械的に算出することで,このような弊害を除去しています。
こうすれば,加害者にとっても損害額が簡単に把握できますし,被害者にとっても,自分が精神的損害を負ったことを証明する必要がなくなり,便利なのです。
3 慰謝料金額の基準
入通院慰謝料に限りませんが,交通事故による損害賠償は,自賠責基準,任意保険基準,裁判基準(弁護士基準)と,3段階に分かれています。
自賠責基準が一番金額が小さく,裁判基準が一番高い基準になっています。
弁護士を入れずに任意保険会社と交渉したとき,保険会社は,上記の任意保険基準で慰謝料を提示してきます。
弁護士を入れた場合,あまり低い賠償額を提示していると裁判になる可能性があることから,保険会社も,裁判基準に近い形での慰謝料を提示してきます。これが「交通事故では弁護士を入れると慰謝料が増える」ということの実情です。
弁護士を入れると,入通院慰謝料だけでも,概ね2~3割程度の増額を見込めると思っていいでしょう。
4 請求にあたっての注意点
弁護士を入れずに裁判基準で示談をしようとしても,まず保険会社は応じてきません。そのため,弁護士費用特約があれば,迷いなく弁護士にご相談されるべきでしょう。
また,極めて軽微な事故なのに,通院慰謝料を多くとる目的で,通院回数を不当に増やした場合などは,損害賠償請求そのものが認められなくなることがある他,極端な場合には詐欺に該当することもあります。
交通事故においては,素人判断は致命的になりかねますので,特段の事情のない限り,弁護士に依頼されるべきだと思います。