交通事故の損害賠償~通院交通費
1 通院交通費の請求
通院交通費とは,その名の通り,通院にかかった交通費のことをいいます。
原則として実費(実際にかかった費用)が支払われますが,いくつか注意すべき点があります。
ここでは,自家用車通院,タクシー通院,職場からの通院,お見舞いにかかる交通費についてご紹介します。
2 自家用車による通院
自家用車を用いて通院する場合,特に交通費がかかっていないと思われるかもしれませんが,まず,車の駐車場代が交通費として考えられます。
駐車場代について争いになることは少ないですが,あまりにも回数が多く,かつ,入出車時間にあまりにも乖離があるような場合には,否認されることがあります(車を駐車してどこかに遊びに行ったのではないかと思われたりします)。また,近くに安い駐車場があるのに,敢えて高いところを使うなど,正当な理由のない金額については,否認されてもやむを得ません。
また,ガソリン代として,1キロあたり15円の請求が認められます。これについては,実際にかかった費用の計算が極めて難しい(病院に行くためだけに自家用車を使うものではないからです)ため,裁判になっても,概ねこの金額で算出されます。
駐車場代を請求するためには,領収書が必須ですので,なくさずに保管しておいてください。
3 タクシー通院
通院交通費でモメる原因として多いのが,このタクシー費用です。
通院交通費に限らず,損害賠償は,必要最低限の範囲に限って認められるものですが,タクシーは,他の交通手段に比較して高額なため,裁判上でもその支払いの要否が問題になることが多いのです。
まず,他の手段によって容易に通院ができる場合には,タクシー費用は認められないことが多いです。また,怪我の症状等から見てタクシーでないと通院できないような場合には,相手方保険会社の事前の同意を得て,また,かかりつけのお医者さんに,タクシーでの通院をしたほうがいい旨の診断書その他書面を作成してもらっておくのが無難です。
4 職場からの通院
職場と自宅の距離が離れており,仕事のある日に,職場近くの病院に通院している場合には,原則として,職場から病院までの通院交通費しか認められません。自宅までの交通費を全部出すのは,実質的に,職場までの通勤費を加害者が負担することになって,不当だからです。
ただし,仕事のない日に通院したことが証明できる場合には,その日については自宅からの通院交通費が認められます。
5 お見舞いにかかる交通費
これも実務上もめることがあるのですが,どのような場合でもお見舞いの交通費が認められるわけではありません。
被害者と見舞人の関係,被害者の傷害の程度,被害者の年齢等,見舞いの回数,1回あたりの見舞いにかかる費用等々,諸事情を勘案して,その当否および金額が判断されます。
例えば,小学生の実子に対する見舞いであれば,それがかなりの長期に渡っても,交通費は認められる余地がありそうですし,ある程度距離が離れていても認められる可能性があります。ただし,東京と福岡県のように,往復に数万円もかかるような場合には,金額は制限される可能性があります。これも,他に見舞いに行ける人がいないような場合には,制限がされない可能性もあります。
単なる友人の関係にとどまる場合には,原則として交通費は認められませんが,被害が重篤で,被害者の親族が皆遠方にいるため,見舞いに行けるのがその友人のみというような場合には,請求の余地はありそうです。
このように,見舞いに関する交通費が認められるかどうかは,事情に応じて相当に異なってきます。
見舞いにかかる交通費が高額になることも多いので,判断に困ったら弁護士にご相談することをおすすめします。